暮崎美利■29歳


手当たり次第にボタンを押して、
止まった階でエレベーターから飛び出した。

「! うわっ」

「あっ、っ…!」

エレベータ出口を曲がって直ぐ、
ドリンクコーナーがあった。

俺はそこで人にぶつかったのだ。

「すいませっ…、副部長?」

「…斎藤か、元気がいいな」

暮崎副部長は痛さに顔をしかめながら、
でも笑ってそう言った。

仕事は出来るし人格も出来ている。
完璧な人…という評判、だ。

「副部長、コーヒーが……」

「ああ、大丈夫だ。このくらい」

ぶつかった時、副部長が持っていたコーヒーが
その手に掛かったようだ。

買ったばかりの熱いコーヒーが、
俺の不注意で…


      早く冷やしましょう。