「村崎さん、手、出して?」

「手ですか?」

「そう両手ね」

「はい。 …あ!!」

机越しに強く手を引く。

机に腹這いになった村崎さんが
仰向けに向き直った時、

俺は彼の正面にいた。両脚の間に立ち、

「いけません…」

村崎さんを挟むように、机に両手を付く。
俺から逃げると、身体が横たわる…

唇を寄せると、顔を横にして逃げた。

「あ…。斉藤君、副部長が…」

「大丈夫だって…」

「だめ…。副部長に見られてしまうから…」

知らなかった、俺Sかも。なんか燃える…

「…気になる?」

「なる…」

『気にしないで、どうぞ』

そうそう…って、え?!

「ふ副部長、いつお戻りで?」

「さっき」

ヤベー…。
具合が悪くなった村崎さんを介抱してました。
じゃ、無理があるよな…やっぱり。どうしよ…

村崎さんから離れた途端、

「すいませんすいません、失礼しますっ」

彼は脱兎のごとく部屋を出て行った。
よし、俺も逃げ―…

「逃げる気か、斉藤」

「いえ、その…」

「責任感のない男だ。
 君に明日の仕事を任せたのは失敗だった。
 明日は代りの者に行かせる」

「あの…」

「明日は自宅待機を命じる。さぁ、出ていきなさい」

「…はい」


こうして、仕事も信頼も男も無くし、
俺はとぼとぼと会社を後にしたのだった…


         GAME OVER