「もしもし、真中君っ!?」

時間切れで追い出された会社の前から
携帯にかけている。

『…斉藤さん?』

「そう、俺!双子に携帯番号きいたんだけど、
 手帳知ってるって言ってなかった!?」

オフィスの机、床、ゴミ箱、隣の机、
廊下、駐車場、全部探したけど
どこにもなかったんだ手帳がっ。

戸締りするから出ろと追い出されて
やっと、真中の言葉を思い出したのだ。

「どこにあるかを…おい?泣いてんのか?」

『会いにきて斉藤さん』

「はぁ?今ね、ものすごく―…」

『俺も…好きだったのに…
 さよならなんていやだよう…』

「すぐ行きます」


約束の場所に着くと、先に待っていた真中は
俺の胸に飛び込んできた。

涙に濡れた瞳で俺を見上げて
自分からキスをする。

まさかこんな事がおこるとは…
俺はつい聞いてしまった。

「どうしたんだ、真中?」

「だって…浮気する人はいやだけど、
 さよならなんて…斉藤さん…」

さよならは、そういう意味ではなかったが。
それに、双子へのライバル心もあるらしい。

強く抱き合い、朝まで一緒にいた。

そして朝、目が覚めて気がついた。
手帳どころか、仕事まで忘れてた…

真中を見ると、
『なんでオレ、あんなに盛り上ってたんだろ』
って顔してる…

失敗した…。まだ抱っことキスしかしてねぇ。

こんな事なら格好つけずに、
勢いで最後までやっとけば良かった!!

出社すると大騒動&大目玉で、
頭を下げまくる俺は相当カッコ悪く、情けなく

1日ヘトヘトになったところで仕上げに

「さようなら、斉藤さん」

と、真中に挨拶されたのであった…
 

     GAME OVER