魔道士の身体を仰向けに寝かし、ローブをまくり上げた。
下に何も着ていないのは、正しい魔道士の服装だ。
「あ、こいつにもなんか書いてある」
忍が魔道士の裸を覗き込んだ。
「これは染料だ。行う呪術や季節によっても書きかえられる物だから、
お前のものとは違うだろうな」
「…そうか」
話していると銅も側に来た。
「絵。お はな」
言いながら身体に描かれた模様を指で、つつっ、となぞった。
ぴくっ、と魔道士の身体が震えた。
「俺は顔に見える。ここが目でここが鼻」
忍も魔道士の腹を撫でる。
「う…」
魔道士がうめき声を上げた。瞼がぴくぴくと動く。
しかしそれにはかまわず、
「ここ、ちょ うちょ」
「ここが手で、でも足はこっちだ。あ、これ剣」
2人は指で、魔道士の身体をあちらこちらと撫でまわしている。
…私がいたずらする隙間がないではないか。
仕方なく、辺りを見渡してみた。
染料らしき瓶と、筆を見つける。
私はそれを取ってまた座った。
「どれ、銅。蝶はどこだ」
「こ こ」
「では近くに花を描いてやろう」
染料は灰色と思ったが、肌に付くと鮮やかな紫に代わった。
「わー」
無邪気に銅が手を叩く。
「王様、ここ目と鼻」
「髭でも描くか」
「あははは…。なぁ、なぁ、ここにもなんかしょーぜ」
「なんかとはなんだ」
「って、もう塗りつぶしてるし、あ」
「膨らんできたな。銅、乳首でも舐めてやれ」
「やあーん」
「はっ!!」
魔道士が目を覚ました。
「ひいっ!!」
私をみて怯える。そして…
「はっ、裸?おっ、お前達、私に何をしているんだ」
何といわれても言い様がないが、
忍を見ると忍も私を見た。どう言うのか?落書きか?
「む らさき、きれい」
銅に言われて魔道士が自分の身体を見た。
「ひ…ひいいい〜、私のおち●ち●があ〜」
「立ってる立ってる」
忍にげらげら笑われて、魔道士は逃げようとした。
…そうはいかん。
私は魔道士を捕まえて羽交い締めにした。
「銅、していいぞ。『お絵描き』」
「いい の?」
「わーい、俺もしよーっと」
「いやあーっっ、やめてええええー」
1時間程が経過した。
「かわいそう の、まどし」
随分と馬鹿馬鹿しい姿になって、魔道士はしくしくと泣いている。
ここまで描いておいて今更だが銅が同情した。
「気にすんなよ、銅。こいつだってイイ思いしたんだし」
身体中を筆で擽られて気持良くなってしまい、
大きくした部分を銅の手で擦られて魔道士は我々に見られながら射精した。
溜まっていたのか随分と濃い液がどくどくと…
「いっ、言うなー!!」
「…貴様、まだ自分の立場を分かっておらんな」
「ヒイイーー」
睨んだだけで悲鳴を上げる。
「か わいそう の」
銅は壁に掛かっていた織物を取り、魔道士の方に掛けた。
「銅ちゃん…」
…勝手に名前を覚えて呼ぶな。おや
「珍しい織物だな、それは何だ?」
「これは羊だ。…羊です!羊でございます!」
「よろしい。…私が持っている物よりも毛が細いな、
それに光りが滑らかで…美しい。これは…」
「はい、この森の羊のものでございますです王様にはごきげんよう」
「俺もちょっとかわいそうになってきた」
忍までそんな事を言う。
これではまるで、私が悪いようではないか。
「魔道士」
「はい」
「羊はどこにいる」
「森のどこかに…」
「それは分かっている!これだけの織物が作れるのならば、
羊を飼育しているのだろう。どこだ」
忍が横から口を挟んだ。
「全部連れて行くとは言わねぇよ。1番綺麗な羊だけ、一匹だけもらっていく、いいだろ?」
私は黙って魔道士を見つめた。
「…約束してください」
「なんだ、言え」
「結構です、申し訳ございませんでした」
何故か土下座をする。
「言えと言っているのに、貴様〜…」
その背中を何度も蹴ると、銅がしがみ付いて私の脚を止めた。
「おゆるしください」
「銅ちゃん…ありがとう、君だけだよ」
元はといえば銅が悪いのだがな、その身体の笑える落書きは。
魔道士は覚悟を決めたようにこう言った。
「教えるからもう勘弁して下さい!!」
「誓おう。悪くはしないと」
「本当ですよね??」
「貴様〜、この私を疑うとは…」
「ヒィィィイ」
「にげる は だめ。言 う」
「銅ちゃん…わかりました、王様。
詳しい場所までは教える事ができませんが、あなたならわかるはずです。
羊はある場所に隠されています。ここだと思う場所で
Ctrl + A
の呪文を唱えて下さい」
「おい、場所が教えられないなら、意味ないぜ?」
「よい、忍。それで十分だ」
あなたならわかる。そう言われて、
わからないから教えろとはいえぬ。王として。
「では魔道士」
「は、はい、王様…」
「約束通り悪いようにはせん、貴様を城の魔道士に雇ってやろう。よかったな」
「…よかったな」
棒読みに、忍が言うと、
「うーん…」
魔道士はばったりと後ろに倒れた。
気絶するほど嬉しいのか、かわいい奴だ。
私達は魔道士を眠らせたまま、始めの道へと引き返した。
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