それから数年後…
…また怪人が出たのか。
街で配られる号外を手に取り、今では慣れてしまった怪奇現象に
ろくに記事を見もせず捨ててしまおうとしたところで
あなたは足を止めました。
息子は…大丈夫だろうか…
突然、地球にやってきた悪の組織はなぜか日本を本拠地にし、
次々と新しい怪人が残虐の限りをつくすのです。
幼稚園バスのハイジャック。
遊園地の乗っ取り。
数え上げればキリがありません。
正義の使者、
ウルトラGライダーファイブ(でも1人)がいなければ
世界はどうなっていた事でしょう―…
■
あなたは手にした紙を丸めてポケットにしまい、
また歩きだしました。
今夜は息子の誕生日なので、
好きだった金目鯛の煮付けを作り、陰ながら祝ってあげるつもりです。
しかし、魚屋さんには人影がありません。
「おかしいな…。すいませーん。…―はっ!」
イカイカ〜
いかにも不自然で大きいとは思っていた店先のイカが
名乗りを上げつつ立ちあがりました。
しまった、怪人イカ臭舞いです。
あなたは逃げおくれました。
このままでは長い足に捕まってイカ臭くされてしまいます。
そうなったらもう近所を歩けません!
うねうねと空で足を踊らせていたイカ怪人の目があなたを捕らえました。
一際長い足が巻き付こうと唸ったその時―…
「怪人め!そこまでだ!!」
振り向くとそこには―…
「父さん、ここは僕にまかせて逃げて!!」
久しぶりに見る息子はかわってはいませんでしたが
以前よりも逞しくなったように見えます。
「お前を置いて逃げられるものか!やっと会えたのに…」
あなたは叫び、
息子はあなたを怪人から守るように、その前に立ちました。
イカイカ〜
息子は脚を広げて立ち、正面で手を組みました。
「チェンジ!ミラクル変身チェックアウト!!」
眩い閃光に目を閉じ、再び見たそこには―…
「きっ、キミは…ウルトラGライダーファイブ!」
「ちがいます父さん。今はバージョンアップして
スーパーウルトラGライダーゼットセブンです」
「それはすまん」
「いいんです。親御さんはみんな同じものだと思いがちですから。
でも間違えておもちゃを買うと子供さんは号泣ですからご注意を。
そんな事より、とーう、くらえ怪人、Gキーックあんどパーンチ!!
くらえ!必殺!なまはげ出刃剣!シャキ―ン!!ズバッ!」
どかーん。
怪人は爆破して砕け散りました。
後には美味しそうなイカ焼きが降ってくるばかりです。
路地裏から猫が集まってきます。
穏やかな光が正義の使者を包み、
その光が消えた後、そこにはあなたの息子がいました。
「おまえは…」
「お久しぶりです。父さん…」
あなたは息子の姿を見つめ、それからゆっくりとこう言いました。
「すべてを知ってしまったんだな」
「…はい。父さん、
801星雲からやってきた僕の本当の両親が死んだ後、
残された僕を育ててくださってありがとうございました」
「しかし、キミの両親にそんな力はなかったが…」
「山奥で修行して潜在能力に目覚めたのです。僕、
育ててもらったお礼に、父さんのいるこの世界を守ります!」
「何をバカな…。私のためにお前が…。
しかし、この世界はお前の力が必要だ…」
息子への愛と正義にあなたの心は揺れます。
「…わかった」
「父さん…」
「私も一緒に戦おう。何の力もなく何もしてやれないかもしれんが
私も一緒に、お前が行くところに連れて行ってくれ!」
「父さん…でも…」
息子もまた、あなたへの愛ゆえに心迷います。
「…わかりました。一緒にきてください、父さん!」
差し出された息子の手を、あなたは強く握り返しました。
「…ところで父さん、僕、ほんとは200歳越えてるんだよね。
僕の方が年上なんだから、今度から名前で呼ぼんでもいい?
どう?父さん」
■
とりあえず、息子は立派な人に育ちました。
子育てお疲れさまでした。
■end
めちゃくちゃだよ!!(°Д°;)