そおっと自転車のペダルを踏んで、静かに二人の後から付いてく。
彼女の歩くスピードに会わせているのか、兄ちゃんはゆっくり歩いてく。
僕の自転車の車輪がカラカラ鳴った。
もう少し早く歩いてくれないかなー…追い付いちゃうよ。
もっと早くペダルを扱がないと転がるだけの車輪じゃバランスがとれない。
ぐらぐらぐら…
「わっ」
視界がひっくり返る。地面で体を打って、自転車も派手な音を立てて僕の上に倒れてきた。
「…涼」
「えへ」
とうとう転んだ僕を、振り返った洋兄ちゃんが呆れた顔で見ている。
洋兄ちゃんはこっちに来て、自転車を起こしてくれた。
「涼の気持はよーく分かった」
「じゃあ遊んでくれる?」
「また今度遊んでやるから、今日はコレで友達とでも遊んできな」
「…コレ?」
洋兄ちゃんは何かのチケットを僕にくれた。
二つ折りになってたそれを広げて見ると、遊園地のプール券だった。
「僕これ洋兄ちゃんと行きたい」
「……。ごめんな、涼」
あれ?「ダメ!」って言われちゃうと思ったのに。
洋兄ちゃんはものすごく悲しそうに目を伏せている…
「俺だって…涼といたいんだよ…」
そんな事言われたら僕…
「困らせてごめんね洋兄ちゃんっ。涼はいつでもいいから、また今度遊ぼうねえぇ」
「…じゃ、今日はそういう事で。バイバイ涼」
「ばいばい…」
手を振りながら思った。
なんか、うまくあしらわれた気がする、と…。
僕は洋兄ちゃんに貰ったプール券を、大事にポケットにしまった。
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