彼は部屋にあったカメラを手にすると数枚、僕を撮った。

「ああ、やはり君を写すのは楽しい。すばらしいよ」
そう言って彼はカメラ越しに微笑んだ。

いま彼はどんな僕を見てるんだろう…

「涼です」
「リョウ…?」
「僕、涼っていいます。できればキミじゃなくて涼って…」
「私は空木。これからもよろしく、涼君」
「はい」
彼はもう1枚僕を写した。

今年の夏休みは空木さんとずーっと一緒。その時僕はそう思った。


なのに、それから間もなく彼は去って行った。
仕事のカンが戻ったから、自分の仕事に戻ると行って日本を出て行った。

涼のお蔭だとかありがとうとか言われても嬉しくなんてなかった…


夏休みが終わって新学期が始まる頃、エアメールが届いた。
手紙は無く、何枚かの写真とそれにメッセージが書かれていた。
映画でみた事がある人達のポラロイド。
広い庭の豪邸。ゴールデンレトリバー。外車。庭のプール。

『部屋を空けて待ってる。卒業したらおいで』

壁には写真を引き伸ばしたパネル。あの時の僕の写真だった…
そのポラロイドに書かれた文字を、僕は心を込めて声に出して読んだ。

「愛してる」


                         END