「ゆ…勇士がいいなら、僕もいいよ」
「ふうん…」
勇士は黙った。
静かな教室。遠くから運動部の歓声が聞える。中庭の木からまたセミが鳴き出した。
僕は自分の心臓の音が勇士に聞えてしまいそうな気がした。
すごくドキドキしてる。苦しい。
「サイアク」
…え?勇士は黙って教室を出た。
当然、僕も後に付いて出た。
勇士はプールの更衣室に戻り、声を掛けてきた副部長を無視して服に着替えた。
僕も服を着替えて学校を出た。
校門のところで、
「妙な事きいて悪かったな。気にしないでくれ」
そう言うと勇士は僕と反対方向に歩いて行った。
家に帰るのなら途中まで僕と同じ方向なのに…
自分から誘ったくせに勇士の奴。なんて奴だ。何考えてんのかさっぱり分からない。
すっかり悲しい気分になった僕は洋兄ちゃんのマンションに寄った。
洋兄ちゃんは部屋に戻っていて、一緒に夜までテレビゲームをした。
やっぱり僕、洋兄ちゃんが1番好き。だって優しいもの。
だけど一生、僕は告白しないだろう。
もしも、洋兄ちゃんが僕に好きって言う事があっても、その時は断るんだ。
だって、期待したのに拒絶されるのは悲しいから…
END