エレベーター前 21:00
「もう大丈夫?」

「うん」

「よかった、それじゃ」

「あ…」

副部長から離れた。トイレを出る。

そうだ、俺、忘れ物取りに来たんだったし、
ぐずぐずしてないで早く帰ろう。

エレベーターに向かい、ボタンを押して待った。

「ぐす…くすん」

背中に重い気配が…。嫌だけど振り返る。

「副部長、あの…」

そういえば最近マンションに行ってなかったとか
電話もメールもしてなかったとか副部長の仕事が
絶不調でまわりの人間関係も最悪らしいとか、

分かってたが無視してたことが全部、
目の前にきた。

どうしようか…

年甲斐も無くべそかいてる頬をなでる。
…こんなとこ、会社の人間に見られたらお終いだ。

「わーっ!!」

チーン♪と音がして開いたエレベータに腕つっこんで
「閉」を押して、逃げる。
 

             階段→