「また明日」

なにもなかったようにいつも通り、軽く手を振ると
真中は不服そうに唇を尖らせた。

それから、歩く俺の後をついてきている。
…当り前だ。行く方向が一緒だから仕方がない。

7階オフィスに入ると、
同期の佐藤が俺を見付けて遠くから指差した。

「帰った奴がまた来た」

「佐藤が淋しがってるだろうと思ってな」

「その通り。わかってくれて、ありがとう」

「愛してるよ」

バカな会話をしていると、背中に刺すような視線が…

隣にきた佐藤が、空いてる椅子に勝手に座る。
小声でこう言った。

「お前、このままでいいのか?」

「このままって?」

「誰もが割切った恋愛に向いてる訳じゃないって事、
 わかってんだろ?」

佐藤とは何度か寝た事がある。
佐藤はノーマルなので、完全に遊びでした事だ。

だが真中は、好みがどうであれ、
遊びではしないのだと思う。

「…わかってる。だから、そうじゃない子には迫らない」

「ばか、お前の事だよ」

「え?」

佐藤は帰って行った。

机に俺の手帳はなかった。

まだ時間はあったが、探すのを止め、

            会社を出た →