村崎祥司■26歳


面倒だ。早く帰りたい。
村崎さんがどこにいるかもわからないのに、
探しまわれというんだろうか。

エレベータが開いて、フロアに出たが
どうするか…

一回りして会わなかったら、もういいかな。

角を曲がったとき、
反対から歩いてきた人とぶつかった。

お互い全く気付いていなかったものだから、
俺はよろけたし、相手は持ってた書類束をばらまいた

「すっ、すいません、すいません。…あ」

「ごめん、村崎さん」

書類を拾おうとすると、彼は心配そうにこう言った。

「あの、なにかミスありました?資料に…」

村崎さんは派遣社員で、資料係をしている。
営業が仕事先に見せる資料を作るのが仕事。

クリエイティブな仕事に就きたいらしいが、
現実はこういうバイト暮しで、結構貧乏らしい。

飯おごったら仲良くなって、
俺の事好きみたいだから一回 やった。

「…いや、資料は完璧。大丈夫」

「よかった…。急いだので…」

明日の仕事の為に、無理言って資料を急がせた。
だから、他の仕事に支障が出て残業してるのだろう。

「それより早く拾わないと…」

「あ、いいです。俺、拾いますから、すいません」



      そんな訳にはいかない