私は忍と銅を連れ、城の地下へと向った。

金銀財宝の宝物庫、古より伝わった魔法書の書庫、
今は使用していない空の地下牢…


銅は同行できるのが嬉しいらしく、
はにかんだ笑みを浮かべながら、私達のやや後ろを
小さな足取りで懸命についてくる。

忍はというと仏頂面だ。

狩りは生け捕りが目的だが誤って獲物を殺す場合があるし、
捕らえた獲物は必ず暴れる。そういった事を銅に見せたくないらしい。
狩りの喜びを奴隷には分けたのないのだろうか?
以外と忍も冷たいものだ。所詮は傭兵上がりだ。


階段を下り続け、
城の最も奥深く、魔道門に着いた。

暗い廊下を曲がると中広のホールに出る。
高い天井からは仄かな光りがさし、壁には消えない蝋燭がいつまでも燃えている。
ホールの奥の壁は、天井までの
巨大な扉…

忍はすでに廊下の途中から、不快気に腕を擦ったり空を見渡していた。
「何か感じるのか?忍…」
「ここはニガテだ。空気が悪い」

そう言いながらも忍は恐れる事なく扉へと進んだ。
重い扉を両手でしっかり掴み、開いた。

ゴウン。地下の空間に金属が響く。

開いた扉の先は、岩壁だ。
「気がすんだか。扉を閉めろ忍」

何度見ても不思議らしい。忍が首を傾げながら軋む扉を閉めるのを背中に聞きながら、
私は扉に向って右の壁の前に立った。

白髪白髭が長く伸びた魔道士が、壁に半身を塗り込められている。
100歳は越えようかという容貌だか、3年前さらってきた時は美しい青年だった。

この魔道士もそろそろ使用期限が切れるな…
私はだらしなく眠り扱ける魔道士の頬を左右、平手打ちした。

人の肌を打つというのは、実に心地の良い痺れがするものだ。
萎れた魔道士すら愛しく思える。

「起きろ。扉の用意をするんだ」
「…はっ、王様。……はい。かしこまりました」

私の姿を見てすぐに、魔道士は己の仕事に取り掛かった。
むにゃむにゃと口を動かしながら目を閉じ、またその目を開く。

目が開くのと同じに、扉がうっすらと開いて、その向こうから光りが漏れた。
光りが床に線になって伸びる。

「開け扉」

魔道士の一声で音もなく扉が開く。

奴隷のくせに美しいものが好きな銅がまっさきに近寄った。

扉の向こうに現れた光の廊下。

私、忍、銅の順で足を踏み入れ、
私達は光りの通路を先へと歩きだした。


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