光りの道を歩いていると、突然、その床が抜けた。

































階段を踏み外したかのように、倒れかけながら
私達は森へと降りたった。

「魔道士め…」
あの耄碌、また眠ってしまったに違いない。

振りかえると、やはり帰りの門が消えていた。

木々の向こうの遠くに、崖とその上の我が城が見える。
帰り道を思うと気が遠くなるが、先を考えるのは性分ではない。

先に進むとしよう。

と、目前の木の枝に小鳥がとまった。

少女の顔をした金色の小鳥だ。
ソプラノで歌い出す。

〜残忍な王がくるよ。龍の年には戦ばかり。蛇の年は儚く過ぎて
馬の年には苦しみばかり。獣たちよ、逃げて逃げて
新しい年に捕まる前に逃げ……〜

かわいらしい歌声に思わず微笑みかけると、小鳥はさえずりを止めてしまった。

「どうした、続けろ。歌うがいい」

枝がしなり、小鳥は飛び立った。

「声をかけたら逃げてしまったか。鳥というのは臆病なものだ」
「無理もない…」
「何か言ったか、忍」
「なにも。…ちゃんと化生の森に着いたみたいだな」

ここは半獣の住む森。
ここに自由にくる力があるのも、また狩りをして獲物を持ちかえれるのも
世界広しといえども私だけだ。

配下の国々の王達との新年会が近い今、
獲物なしには奴等に示しがつかない。
私の力が弱まったと理由をつけて謀反をくわだてる者が出ないとも限らない。
…叩き潰せば済む事だが、私は面倒事は嫌いだ。
何より軽く見られる事は許せない。

「忍!獣はどこだ。狩るぞ」
「どこだ…って俺がききたいよ。とりあえず進もうぜ」

忍が指差した道の先は、左右に分かれていた。

右の道の脇には白い花が咲いている。
左の道には黒い石が落ちている。


右へ     左へ