「ここですよ」

見習魔道士が私達を連れてきたのは、
あばら屋からすこし離れた林の中だった。

指し示す地面には、粉のようなもので白い円が書いてある。

「やけに小さいな」
「わたしのお師匠様はとても偉大な方なので、
この円で事足りるのです。さぁ、脚を入れてください」

「…俺が先にやる」
忍がそう言って前に出ると、
「いけません!」
そう言って見習魔道士は忍の前に立ちはだかった。

「…何故だ」
忍は腰の刀に手を掛けた。
「あ、あなたは家来の方でしょう?こういうものは偉い方から通るものなんです!」
「随分と無茶な理論じゃねぇかよ」
「私のお師匠様は王宮使えをした事もある魔道士様なんです。
魔道は理論で動くんです」

「ほう…どこの王に使えたと言うのだ」
私が言うと見習魔道士は言葉に詰った。
「…詳しくは、わ、私は見習いですから、先生に質問はできません。
ただ、おっしゃる事を聞くだけですから」
…なるほど、そうか。

「早くしてもらわないと、先生に見つかったら叱られます。
この円は念じるところに貴方を連れていってくれるでしょう。
貴方の持ち物、つまり家来の方々も続けて同じ場所へ移動します。
…どうしますか?こわいですか?」


やめて道を戻る    白い円に足を入れる