こわいのか、そう言われて後にひけるものか。
私は白円の中に足を入れ、強く踏みしめた。
途端、身体が跳ねる衝撃を受けた。
世界が逆になる。
転送されるのか?
…ちがう。
これは…
「貴様〜…」
「はははは愚かな王よ、獣の罠に掛かって、
木に逆さ吊りになるのがお前にはお似合いだ!ずっとそうしているがいい、ははは…」
私は杉の木に逆さに吊られたまま歯軋りした。
忍が靴を脱ぎ、この木を上ろうと幹に手を掛ける。
「忍!忍!何をしているあいつを負え!殺せ!」
「はいはい。あんたを助けてからな。…おい、暴れるなよ、落ちるぞ」
忍に抱えられ、地面に下りた私は、
見習魔道士を追う事ができなかった。
足の骨が関節を外れ、筋を痛めていたからだ。
いくらあいつを追えといっても、
忍も銅も私の側から離れない。
私はこう言うしかなかった。
「城に戻る」