テーブルの上に身を乗り出し、2人の間に割って入る。
僕は沢村の手を握って、舐めた。
「甘い」
パシッ。兄ちゃんに頭をはたかれた。
「お前は犬か。すまんね沢村君、しつけができてなくて、ほらお手っ」
犬って何だよー。そう思いつつ、僕は兄ちゃんの手の上に右手を乗せた。
沢村は無表情だ。
兄ちゃんが反対の手を出したので僕は「おかわり」して
「ワン」
と言ってみた。
「よーしよしよし」
兄ちゃんが僕の髪をくしゃくしゃにする。そうか僕は犬なのか。
僕は沢村の頬も舐めた。
「あっ、こらっ涼っ。おすわりっ、ハウス!」
「うー。わうわう。…やーめた」
「そうしなさい。友達があきれてるから」
「…えっ、あ、ああ。すまない…」
なぜだか沢村は謝った。
兄ちゃんに手を拭いてもらった時よりもっと顔が赤い。
もうちょっと犬になってればよかった。あの赤い耳を噛んでみたいな…。
…僕、何考えてるんだろ。
「じゃあねー、兄ちゃん。僕達、泳いでくるから」
そう言って沢村と椅子を立つと、
「しっかり浸かって頭を冷やしてこい」
と言われてしまった。
うん、兄ちゃん。一度頭を冷やして考えるよ。
僕は誰を好きなのか……
次へ