「よう、入らせてくれよ」
「ああ、どーぞ」
勇士はプールにいた人に適当に声をかけた。
プールを見ると水着の男子が20人程度遊んでいる。服のまま入ってる人も3人…
見学席に女子もが5人程度いた。水着きてるけど、ジュース飲みながら輪になって喋ってる。
顧問の先生もその女子と一緒ににこにこして喋ってる。
「な?」
「うん」
夏休みのプールは完全に、自由な遊び場だ。
目配せした勇士に頷いて、更衣室に向った。
「……出よう」
「えっ、勇士、どうしたの?」
先に歩いて更衣室に向った勇士が手前で足を止めて振り向いた。
僕の腕を掴んで引っ張る。
「行くぞ」
「待ってよ勇士、あ!」
急な心変わりに訳が分からず、抵抗して止まろうとした僕は、
予想外に強い勇士の力にバランスを崩して膝をついた。
「痛ったあ…」
「…悪い。大丈夫か」
僕は立ちあがり、その時、更衣室の窓からこっちを見た人と目が合った。
副部長だ。サッカー部の。
そうか、勇士は副部長に会いたくなかったのか。
でもどうして?副部長は優しくて良い人なのにな。
「ほら、行くぜ」
「だってプール…」
「ああもう、俺がもっと良いプール奢ってやるから!」
そう言われると僕…
わーい。じゃ、そっち行こう。
やだ。気になるし、ここがいい。