ざああざああ…

シャワーの落ちる音に混じってシャッターの音がする。フラッシュが光る度に
僕の瞳に残像の影が残った。

浴槽に横たわった僕の上に細かい水が落ちてくる。

僕の呼吸が早まっているのは、ぱちぱちと肌をたたく水の刺激と、
溜まって滑りおちる水がくすぐったいからだ。見られている事に興奮しているんじゃない、
絶対に。

「やっっ」
ほとんど目をとじていた時、不意の痛みが胸を襲って僕は悲鳴を上げた。
「いっ、イタイッ。ああーっヤメてえっ」
叫ぶ僕に、乳首を指先でねじる力を緩めず彼はこう言った。
「色が悪い」
「えっ」
一瞬、言われた意味が分からなかったが、ショックに痛みを忘れた。
手が離れた時、僕のそこは赤く充血していた。
じんじんとしびれた。敏感になって水飛沫でさえ辛い。

数枚写真を撮られた後、僕は刺激に我慢できずに水に背を向けた。
勝手に動いて怒られるかと思ったが、彼は黙ってまた1枚シャッターを切った。
「あっ」
四つん這いになった僕の、後の方からの光に、僕は触れられてもいないのに声を出した。

シャワーの音、シャッターの音、フラッシュの光、僕の声…

浴槽にいっぱいになった水が溢れ出す。
幾度となく僕は溺れそうになり、顔を水から引き上げられた。
何度目かに、僕は彼に手を伸ばして口付けた。

冷えきった身体に唇だけが熱い。

また離れようとした彼に
「一緒に入って…」
と、ねだると彼は服を着たまま浴槽に入り、近距離から僕を写した。

上から、下から、光るフラッシュ。

「表情がマンネリになってきた」
「ああううっ…ん…んっ、あ…」
お尻に指を入れられ、抵抗するどころかもっと欲しいと身を摺り寄せてしまう。
僕、もうダメかも…

僕は自分から、はじめて他の人のソレを触った。
「…どうしたい?」
「わかんない…」
ソレに僕のを擦り付けてみた。気持ちいい…

「あっ」
彼のが僕のから離れてしまって、僕は声を上げた。
「あーっ」
ソレが後から僕の中に入ってきて、僕はもっと大きな声を出した。

僕がイク瞬間も、フラッシュが光った。
「…これでフィルム最後。よかったよ」
それを聞いて気が遠くなった。

気がつくと広いベッドに眠っていて、もう夜になっていた。
横に畳んで置いてあった服を着る。

シャツが擦れて胸が痛んだ。

…あんな写真、見れる訳ないじゃない。遊ばれちゃったのかなあ。
そう思うと泣きそうになった。

だって僕は彼を好きになっていたから…

部屋を出ると何事もなかったかのように彼は静かにソファーに座って何枚かの写真を見ていた。
「…ああ、目が覚めたかい」
「はい」
今日の中で1番優しく微笑んで、彼は僕を手招いた。

隣に座ろうとした僕は、腕を引かれ、彼の膝に座った。
どうしていいのかわからなくて身を固くした僕の顔を覗き込んで
「恥ずかしいの?」
なんて言う。

ああ、やっぱり。この人は慣れてるんだ。そう思ってまた泣きたくなった。

「…どうした?ほら、写真できたから見てごらん」
「はい…」

恐る恐る見ると、その5枚の写真は僕だとは思えないくらい奇麗だった。
彼があの時見ていたのはこの僕の姿…

「どうだい」
「うれしい…です、けど」

だけど…もっといっぱい撮ったはずだけど…。この写真顔とか上半身とかだけだし…。

「他のは私だけの宝物にする予定なんだが。君が望むならネットで公開しようか?
 顔にモザイクかけて…」
「いっ、いいです」

僕が立ちあがると、彼はゆっくり目を動かして僕の上から下までを見た。
「そのまま、そこに立っててごらん…」

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