「沢村とお母さんって似てる」
「…」

そう言うと沢村はまた少し考えた。

「そんなはずはない」
「どうして?沢村は自分のこと父さん似って思ってんの?」
「そうでもないが…。あの人とは他人だから似てるはずがない」

沢村は出口の方へ体を向けた。
僕達はプールへ出た。

沢村もいろいろあるんだな。

お互い気にしてないつもりだったが、
僕等は親子連れの多い浅いプールを避けた。

波のプールで遊んで、普通のシンプルなプールで泳ぐ。

僕は沢村にクロールを教えた。
前に洋兄ちゃんに教えてもらった事をそのまま沢村にも教えてあげる。

「はじめて25M泳げた…」
泳ぎ終わった荒い息で沢村は僕に礼を言った。
「ありがとう。……すまない」
「なんで謝るの?」
「せっかくのプールなのに授業のような事をさせてしまった」
「うわ、そうだね。ごめん沢村。教えるの楽しくてつい夢中になっちゃった。
 沢村はつまんなかったよね、ごめんー」
僕は両手を合わせて謝った。
沢村は合わせた僕の手を、上から押して水に沈めた。
まだハアハアいってる。
「……つまらなくは、無かった」
「ああっ、沢村ー」
倒れる!そう思って僕は彼を抱き抱えた。

「…なんだ?」
まだ息ははずんでいるものの、落ちついた声。
「だって今、倒れそうに…」
「疲れたから水に浮くつもりだった」
「そうなの…って、あんまし泳げないくせに上手に浮ける?」
「……それはそうだ。もう心配ない…」
沢村の体と密着した僕の胸。
心臓のドキドキが彼に伝わっただろうか。
「あ、ごめん」
「…休憩しないか。コーチ代に何かおごるが」
「わーい。でも、いいの?自分の分は自分で払うよ。誘ったの僕だし」
「友達と使えと義母に小遣いを渡された」
「良いお母さんだねー♪」
「………」

僕等は水から出て店へ向う事にした。

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