図書館はクーラーが効いて、入るとすぐひんやりした空気が僕を冷やしてくれた。

受付のお姉さんが僕を見てにっこりする。
僕は口を大きく動かして、でも小さい声で「こんにちは」と挨拶した。
春に洋兄ちゃんについて来て以来、特に夏になってから僕はよく図書館を利用しているんだ。

涼しいし、マンガはあるし、タダだし、図書館大好き。

さて、たまには今日は頭がよくなりそうな本を読むとしよう。
僕は滅多に行かない図書館の奥へと向った。

「…あれ?」
静かに本を読む大人に混じって僕の知った顔を見つけた。
僕の学年でいつもトップの成績、同じクラスの秀才の沢村和巳だった。

きちんと着てるシャツ。背筋を伸ばした正しい姿勢。
分厚い本のページを大事そうに捲って読んでる。
えらいねえ。
僕は沢村を見る度に関心してしまう。
運動だけは苦手みたいだけど、苦手なりに一生懸命やるからやっぱりえらいなあって
関心しちゃうんだよね。

僕は沢村に
            声を掛けた。

            別に何もしなかった。