僕は机の端にいる彼の、横から話しかけた。
「何読んでんの?」
「!」
沢村が驚いた様子で目を上げる。

「あっ、ごめん。勉強の邪魔した?」
「…いや、勉強ではないから」
沢村は中指で眼鏡の位置を直した。

僕が向いの席に座ると、沢村は重そうな本を持ち上げて、僕に本の背表紙を見せてくれた。

 ―世界の童話全集 8−

へえ、沢村はこんなの読んでたのか。

       「意外と幼稚だな」

       「おもしろそう」