洋兄ちゃんを待っていよう。
 今、彼女と会ってて僕と遊べないなら仕方が無い。
 我慢するから、帰ってきたら、今度は僕と一緒に居て欲しい…

マンションに来た僕は自転車を止めて建物に入り、洋兄ちゃんの部屋のドアの前で腰を下ろした。

外ほどではないけれど、廊下もやっぱり蒸し暑い。
コンビニ行って飲み物買って来ようかな。そう思いはじめた時、隣の部屋のドアが開いた。

部屋から出てきた男の人は僕に気付き、そのまま、じっと僕を見た。
「こんにちは」
僕が取り合えず挨拶すると
「その部屋の人なら、先程出掛けたようだよ」
と、男の人は教えてくれた。
「知ってます。僕、待ってるんです」
「そう」
男の人はそれ以上僕にかまわず、エレベーターの方へ歩いて行った。

どうしよう。管理人さんとかに「ヘンな子がいます」って告げ口なんかされたら、どうしよう…

心配していると、10分もしないうちに、また男の人は戻ってきた。
手にコンビニの袋を持っている。

男の人は部屋の前まで来ると、その袋を僕に差し出した。
「あげる」
「?」
受け取って中を見ると、お茶とアイスと煙草が入っていた。
「っと、これは私の分だ」
そう行って男の人は長い指で煙草を取った。

アイス…食べてもいいのかな。
「暑いだろ?」
そう言われて僕はうなづいた。そして―…

              アイスを食べた。

              貰わずに返した。