「かっこいいでしょ!」
大好きな洋兄ちゃんを褒めてもらえると僕もうれしい。
「いいなあ。ボクもお兄ちゃんほしい…」
「あげないよ。…天君がそんな事言うなんて意外だな」
「どうして?」
「天君はいつも女の子達と遊んでるから、男は嫌いなんだと思ってた」
「…うん。ボク男の子苦手なんだよ。だけど本当はボク――」
きゃああー
突然聞えた歓声に僕等は揃って同じ方向を見た。
「やーん天君」
「すごい偶然ー」
「天君、なんてかわいいの」
…クラスの女子達だ。
色とりどりの水着を着た彼女達は5人程度で天君を取り囲み、
髪を触ったり頬を押したり、まるで天君はお人形状態にしている。
「あれ、夏木だ」
「こんなところで何してんの?夏木」
僕は呼び捨てかよ…
「何ってプールですけど」
束になった女子ほどこわいものはないのでつい敬語になってしまう僕…
「あたし達、これから天君と泳ぐけど、夏木もくる?」
なんじゃそりゃあ。
「夏木君はイトコのお兄ちゃんを待ってなきゃいけないの」
ほら、この天君のかわいらしさを見習えー。
「じゃ、あとは私達に任せなさい」
君達、強引すぎるぞー。なんて男前なんだー。
「夏木君ばいばーい」
天君は立ちあがり、にっこり笑って僕に手をふると女子にかこまれて行ってしまった…
「ば、ばいばーい」
なんだったんだ…
でも丁度よかったのかも。
僕、天君と何していいか分からなかったから。
やっぱり天君は女子と遊ぶのが合ってる子なんだよ。男は嫌いって言ってたし。
「あれ、涼。友達はどうした?何ださっきの悲鳴は??」
…来るのが遅いよ、洋兄ちゃん。
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