僕は1人で、楽しい夏休みのプールを泳いでる。
最初は横目で兄ちゃんを見ながら泳いでたけど、
彼女さんが僕に手を振ってくれるから場所を離れた。
兄ちゃんの今度の彼女は優しそうだな…
この前の彼女より美人じゃないけど。その前の彼女はお菓子つくるの上手だったっけ…
その前は…
「…あーあ」
僕だって、洋兄ちゃんが好きなのに、失恋した数にも入れないんだ。
僕は思いっきり水に潜った。
このプールみたいに、僕の心にいっぱい溜まって溢れそうなものを
どこかにある栓を抜いて流せたらいいのに。
水の中だと泣いてもわからないから、我慢しないですこし泣いた。
皆、楽しそうにボールで遊んだり誰かとじゃれたりしてる。
僕は黙々と泳ぐ。
一生懸命進んでもどこにも辿り着かない。だけど僕は泳ぐのをやめられない…
「涼」
「わっ」
立ち止まって目を擦っていた時、急に後から抱きつかれた。
「…兄ちゃんバイトは?」
洋兄ちゃんは泳ぎながら僕の前に来た。
「今日は早上がり。時間はラクだし、時給は高いし、泳げるし、いいバイトだよ」
「うん。チケットありがとう」
「また貰ったらやるからな」
「うん…」
もういらない。彼女と楽しそうに仕事してる兄ちゃんなんてみたくないよ。
ああ、僕ちょっと泳ぎつかれたみたい。なんだかナイーブだ…
「俺、涼が彼女つれてくるかと思ってたんだけどなあ」
「いないもん、彼女なんて」
「友達もいないのか?付合えそうな子」
「友達は恋人の予備じゃないよ、兄ちゃん」
「コドモっぽい事言うんだな。まさか、運命なんて信じてないだろうな」
兄ちゃんは笑った。
「運命なんて考えないよ。つらいもん」
「…なにかあったのか?涼、俺にいってみな?」
「兄ちゃん…」
「俺に出来る事なら何でもやってやるから」
彼女と別れて
ここでキスして