暮崎美利■29歳
振り向かなくても分かる。
声だけでなく、舌の裏まで知っている相手…
彼は頭が良くて察しの良い人だから、、
絶対に、気付かれたと思う。
意を決して振り向くと、
いつも通り冷静な顔があった。
「ま、まだいらっしゃったんですか」
「ああ、残業するのは効率の悪い証拠だがな」
「そんなことありません、頭が下がります」
そしてつくり笑い。
会社に私情を持ち込まない。これぞオフィスラブ。
なのに…
「すいません、僕のせいで遅くなって、すいません」
村崎さんとは会社でエッチな雰囲気になってました。
…すいません副部長すいません。
心で謝り、顔は営業スマイルの俺。
冷静な副部長の心の中はと思うと…
『地』を知ってるだけにおそろしい…
突然、副部長は視線を外した。
俺達を追い越して歩いて行く。
「あの、副部長。どこに行かれるんですか?」
後に連いていったがいいものか、村崎さんが聞く。
「手洗いに行く途中だった。
村崎君、私の部屋の机に置いておいてくれ」
「は…はい。すいませんでした」
謝られると俺が気まずいんだよ村崎さん〜
頭を下げたついでに持ってた書類をまた落としてるし
あーあ…
副部長室に書類を届ける
トイレに様子を見に行く