正門前20:20
「…ちょっと、聞きたいんだけど」
「はい?」×2
俺は双子の方に向き直った。
何度見てもつくづくそっくりだ。
名札がなければ区別がつかない。
「君達はどうして怒ってるんだ」
「あ、当たり前でしょう!?」
「僕ともこいつとも…斉藤さんが!!」
右多の名札を外して左喜につけた。
左喜の名札を右多につける。
警備服を着るには細い体。
だけど姿勢がよくて、真っ直ぐ前をみてる顔。
いつも無表情だから笑顔を見てみたいと思ったこと。
挨拶以外の声をきいてみたいと思ったこと。
親しくなって知った趣味や癖、
考え方や話し方。
それが好きなところ。
好きでもないのに抱いたわけでもない。
右多も左喜も愛してるよ…
…と、真中がいなければ口に出して言えるのだが。
ここは何といえばよいものか。
双子は顔を見合わせた。
それからまた俺をみた。
「…僕達、仕事があるので」
「また今度お話ししましょう」
「ああ、わかった」
いつまでも逃げるわけにはいかないし。
「それぞれ時間をとろう」
「一緒でいいです」×2
…要するに、ずっと一緒の双子を
分けるような事をしたのがいけなかったらしい。
それさえ守れば後はいいのか…にやり。
さて、双子が出て行き、また真中と2人になった。
彼の方を振り向くと、俺を見て後ずさった。
「警戒しなくても、襲ったりしないぜ。
俺はそんなに飢えてないからね」
「…知ってます」
む、どういう意味か。気にはなるが…
「俺も仕事終わらせて帰ろうっと。
手帳忘れたから取りにきたんだ」
「あ、知ってます」
ん?…ああ、机拭いてくれた時に見たのか。
それじゃ…
「さよなら、真中」
「また明日な」