村崎祥司■26歳


早く早く7階7階。

さっき、3階で止まって4階で下りた奴がいたから
余計にイライラする。

1階くらい階段使え!

この時間のロスで先回りされたらどーすんだ…

 チーン♪

到着音。ドアが全部開くのを待たずに
俺は廊下へ飛び出した。

「 ! 」

角を曲がったとき、
反対から歩いてきた人とぶつかった。

お互い全く気付いていなかったものだから、
俺はよろけたし、相手は持ってた書類束をばらまいた

「すっ、すいません、すいません。…あ」

「村崎さん、まだ居たんだ?」

「ええ、いろいろ仕事ためちゃって…」

派遣社員の村崎さんだ。資料係をしている。
営業が仕事先に見せる資料を作るのが仕事。

クリエイティブな仕事に就きたいらしいが、
現実はこういうバイト暮しで、結構貧乏らしい。

飯おごったら仲良くなって、
俺の事好きみたいだから一回 やった。

「あの、なにかミスありました?資料に…」

「いや、大丈夫。完璧」

「よかった…。急いだので…」

明日の仕事の為に、無理言って資料を急がせた。
だから、他の仕事に支障が出て残業してるのだろう。

「あ、いいです。俺、拾いますから」

落ちた書類を拾おうとしたら、彼はそう言った。


     拾わない


      拾う