「は、い…」
銅は返事をし、名残惜しそうに私の前から立ち上がった。
…妙な奴だ。奴隷は何を考えているかさっぱりわからない。
立って、どこに行くかと見ていたら
部屋の隅、窓際の敷物がない場所にぺたりと座った。
「銅」
「は い」
「椅子に座ってかまわんと言ったろう」
忍が怒るのだ。銅をいじめるなら出ていくと言う。
誤解だ。私は良い王なのだから。
銅は鈴のなるような細い声で
たどたどしく喋った。
「銅…は、奴隷 から、床すわる。椅子 はだめ」
私は猫を持つように胴の衣服の衿を掴んで、
ソファーへ投げた。
「は…」
所在無げに小さく腰掛け、椅子のベルベットと私を交互に見る。
「銅…おこら れる」
「貴様、まさか忍が私より偉いと思ってるんじゃなかろうな」
銅は小さな頭をふるふると左右に振った。
「おうさ ま 、偉いひと。カミサマみたいの きれい で」
銅は輝く瞳で私を見つめている。
褐色の頬がうっすらと赤い。
わかっているなら良い。
…わかってるのか?
わかってないと思う。罰を与える。 わかってると思う。狩りに行く。