「あ……!」
私は銅の髪を掴んで引きずり、
食事を運ばせた時に使用するテーブルまで銅を連れてきた。
「きゃあ……あ」
腰に巻いた細布を掴んで
上に投げ上げた。
「銅」
「は い…」
「お前、どこに乗ってる?」
「テ ブル」
「どこに乗っている?」
「テ―ブル で、す」
「私は椅子に座るのは許したが、テーブルまでは許しておらんな」
「は い。ごめんなさいご…おう さま」
私は宝石飾りのついた果物ナイフを取った。
実際にここで果物をむく事はない。装飾品のナイフだが、良く切れる。
「おゆるしください。おうさ ま」
銅の衣服の胸元に刺し込み、刃を下に下ろすと
安い布はたやすく裂けた。
あらわになった腹部に刃先を当てる。
ちくちくと刺した後、首に刃を向けた。
「豚のように皮をはいでおろすか。
食べ物ならばテーブルの上が居場所だ」
「ふう…う…ぐす」
茶色かかった黒の瞳に、みるみるうちに涙が溢れる。
恐れで漏らしそうなのか、銅は股の間の小さな性器を片手で握った。
「どこから切るか」
「……や」
「こわいか?」
「こわ い。…です」
「では一息に殺してやろう。私は情け深い良い王だからな。
『首を切ってください王様』と言え」
「や…っ」
「先に腹を裂いて臓物を出すか。見て死ぬがいい」
「う…えっ、ひっく…」
怯えた瞳というのは実に美しい。
濡れてきらめく宝石だ。
奴隷も貴族も平民も、同じ人間なのだと感じさせられる尊い瞬間だ。
銅は瞳を伏せた。
濡れた黒い睫が、私の視線から瞳をさえぎる。
銅が眼を閉じると、瞳の表面を被っていた涙が瞼に押されて
頬を滑りおちた。
しゃくりあげ、また瞳を上げる。
桃色の唇が震えながら開いた。
「銅…は、おう さまも、忍さ まも、いない、ところ
売られるはい…や。また、こわい し ごと、するは、こ…わいから
ここ で、おうさ ま、銅をころしてくれ るは、うれしい。
く 首を切ってくださいおう さま」
私は果物ナイフを象牙のさやに戻した。
「おうさ ま…」
つまらん。
覚悟を決めた瞳ほどつまらんものはない。
澄んだ輝きは空虚で気がくさる。
「奴隷の分際で、王自らに首をはねてほしいとは、図々しいにもほどがある」
「は い…。ご めんなさい?」
「新しい服は、お前の道具箱にあるな?」
「は い。お針子さ んたち くれた。たくさん きれい の 服。銅に…」
嬉しそうにもじもじと言う。
…忍といい、なぜこいつは、そんなにも城の人間に可愛がられるのか。
謎だ。ちっぽけで何のとりえもないのに。
…そうか。良い王の城には親切な人間が自然と揃うのだな。
なるほど。そうか。
「おう さま?」
考えていたら銅の存在を忘れていた。
裸のままで、まだテーブルに乗っている。
とりあえず銅を……
狩りに連れて行く 食べる