私は剣を抜き、天へとかざした。
反射ではない、自らの光りで剣が眩く煌いた。
光りが大きくなり、美しい少女の姿となって舞い上がる。
暗い空が裂かれて、晴れた。
私がこの剣で手にかけた実の妹はこの剣に魂を留め、
私の為に999回役に立たなければ
自由にはなれない。
これは呪いではない。愛だ。
妹も、私の役に立ててさぞかし幸せだろう。
下らん男にそそのかされて私に毒を盛った報い、いや、許しなのだから。
「きれえ…」
銅はまだ空を見上げている。
「何もしらないって幸せだよな…」
「忍」
「はいはい」
「返事は一度だ」
「はーい」
…帰ったら部屋に呼ばなくては。
闇も寒波も消えてみると、道には黒石の一つもなく、
私達は1軒のあばら家をぐるりと囲む小道にいた。
乾いた土の道には、私達の足跡がいくつもついていた。
ここを何周もしていたという事か…
改めて怒りがふつふつと湧く。
私は家に近付き、その壁を蹴った。
木の壁はたやすく、埃を立てながら崩れ落ち、
狭い家の中にあった薬瓶や壷や乾物、書物の類が次々と雪崩を起こした。
黒いローブの男が後ずさる。
見ればまだ若い魔道士だ。かろうじて魔道の証、額の石はあるが…
「ここの主はお前か…?」
「ちっ、ちがいます。僕は見習で留守をただ…」
信じる 信じない