「なんとかって…。俺も専門外だぜ?」
私をばかにした罰だ。
可愛がっている銅の前で、困って恥をかくがいい。
忍はぶつぶついいながら、手遊びをはじめた。
「どうした忍?ふふふ、仕方ないここは私が…」
「待ってくれ。そういえば、俺の腕の文字を呼んでくれた学者が教えてくれたんだ…」
「…学者が、何をだ」
「魔よけかなんか…。そうそう、はじゃとかなんとかって…」
…破邪?いかん。
「おそらくそれは、ただのまじないだ。ここは私がだな…」
「たしか、こんな感じで、こうだったっけ?最後はこうなんだよなあ…」
「忍!」
だめだ。興味のある事に関しては、集中力が強い男だ…
「あ!わかったぜ。こうだ、こう。
臨・兵・闘・者・皆・陣・烈・在・前!…あ?」
忍が九字印を切り、あっけなく空の闇は晴れた。
寒波も消え、銅が不思議そうに自分の身体を見る。
私達は1軒のあばら家をぐるりと囲む小道にいた。
乾いた土の道には黒石など一つもない。
代わりに私達の足跡がいくつもついていた。
ここを何周もしていたという事か…
「…おっ!?おー!できたよ俺」
「忍さま は、すご いの」
「すごいか?すごいよなあ?なあ、王様」
…つまらん。
こうなったのも全部…
私は家に近付き、その壁を蹴った。
木の壁はたやすく、埃を立てながら崩れ落ち、
狭い家の中にあった薬瓶や壷や乾物、書物の類が次々と雪崩を起こした。
黒いローブの男が後ずさる。
見ればまだ若い魔道士だ。かろうじて魔道の証、額の石はあるが…
「こ・こ・の・主・は・貴・様・か〜?」
「ちっ、ちがいます。僕は見習で留守をただ…」
信じる 信じない