「王様。おい、王様!」
私を呼ぶぞんざいな声。
傭兵から騎士に取り立ててやったというのに、いつまでも口の利き方を知らない奴だ…
そう思いながら私は振り返り、彼にこう言った。
「その無礼な口を治さなければ、また大臣に叱られるぞ、忍」
黒い髪に黒い瞳。
鍛えているのに筋肉がつかない細くしなやかな身体。
彼は孤児で己のルーツを一切知らぬらしいが、
この辺りでは滅多に見ない東の国の人種だ。
左肩に「忍」と洗っても消えない不思議な文字がある。
学者にその読み方を教えられ、
以来シノブと名乗っているらしい。
「俺が気にいらねェならクビにすればいいんだ」
「クビか…ふふ。確かにお前でなければ、その首をはねているところだ」
私がそう言うと、なぜか忍はびくりと体を強張らせた。
まるで恐怖に凍るような眼で私を見る。
「どうした?百戦錬磨の戦士が、たかが冗談を気に止めたか?」
彼の肩を軽く叩くと、忍は息をつき、調子を取り戻した。
「…そうだ、王様。あの馬が死んだ」
「馬が?なぜ」
「この寒い時期に、あんたが沼地を走らせるから、病気になったんだ」
「寒い時期で半ば凍っている時でなければ、馬は走れんだろう沼を」
「はぁ…。馬の前の蛇も、遊び殺したんだよな…」
「ああ、蛇は駄目だ。思うほど柔らかい身体でもなかった。つまらん」
「いくらなんでも結ぶのが悪い!俺は止めたのにあれは、龍と交換したんだぞ!?
もっと大事に扱えよ!俺は龍使いの王様に………たのに」
「何だ?聞こえなかったが」
「…何でもない。さぁ、狩りに行くんだろ?伴をする」
「おや、馬を狩ったときは、あれほど反対したいたのに、どうした忍?」
「蛇をみていて俺は、あんたは獣を飼っちゃいかん人だと思った。
馬も同じ目にあって俺は、悟った。あんたの残酷さが民に向けられてはいかんと。
あんたは獲物が必要な人なんだ」
私は手を叩いて彼を褒めた。
「利口だ。よくぞ私を理解したな忍。だからお前は私のお気に入りだ」
忍の首筋に手を掛けて、引き寄せる。
その耳元に優しく語り掛ける。
「残酷は余計だがな。なにか誤解をしていないか?忍」
「はい…。すい…すいません。言葉を謝りました…」
「………」
「あ…あなたは優しくて良い王です」
私は彼に微笑みかけ、手を放した。
「それでは忍……
用意をするから待ってくれ 狩りに行こうか 私の部屋へくるんだ…