私は2人に黙っているよう身振りで示し、
兎の死角へとまわり込んだ。

銅は私に絶対服従だ。たとえ泣くとしても。
忍はこの後もっと良い獣を狩って、兎は逃がせばよいとでも考えているのだろう。

私は草むらに腹ばいになり、風を待っている。

強い風が吹き、草が揺れたとき、
兎を狩るのだ…

今だ!

私は飛び出し、そして…


「うわああああ…」


…落下した。


枯れ木の陰に深い穴があったのだ。

兎は穴を掘る。…それにしてもこれは深すぎる。

腰と左足の膝が痛んだ。
土の壁に手を付きながらなんとか立ち上がる。

私が立ちあがり、手を伸ばしても、届かない高さだ…


その私を穴の上から兎が覗き込んだ。
獣に感情はない。
だが、その時、兎は私を見て笑った気がした。


ガサガサと草を踏む音が近付く。

「おーい、王様ー?兎は逃げたぜー、どこ行ったー?」
「おうさ まー」


私ならはここだ。
助けを…



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