公園は暑い。

植え込みの木々からはセミが鳴き、レンガの道には陽炎が立ち、
湿気っぽい熱気はかなりの不快指数だ。

「あっちいっ」
日陰のベンチに腰を下ろそうとしたが、鉄のベンチは十分に温まっていた…

僕はここに来た事を深く後悔した。

「そうだ。噴水にいこう…」
僕は独り言をいいながら、ふらふらと噴水に向った。

ぱしゃぱしゃぱしゃ…

ぬるそうな水が跳ね上がり動いている。
期待したような涼しさはなかったが、それでも噴水には人がいた。
まるで腰掛けたアドニスの彫刻飾りだ。
熱にうかされた僕はそんな事を思った。
こんなに暑いのに涼しげな瞳で静かに水を見詰めているきれいな男の子。

かわいい子はいつ見てもかわいいんだなー。
僕は彼を知っている。彼も僕を知ってるはずだ。だって同じクラスなんだもん。

「おーい、天君」
「はーい?あっ、夏木君だー」
僕に気付いた天野君はほっそりした腕を左右に大きく振った。
細い髪がふわふわと風に揺れる。

「天君1人?」
そういえば、天君はいつも女子と一緒だから、直接話すのって今日が初めてかもしれない。
正面から、彼の睫の長い大きな瞳や小柄な身長を前にするとなぜかドキドキした。
天君は無邪気に口を開いた。
「ううん、シリルと一緒」
「しりる?」
「うん。公園に散歩に来たの」
「あ、犬か。その犬どこにいるの?」
「犬じゃないよう。ここ」
天君は下を指差している。

その指の先を見ると、噴水の隅で
赤いアミに入った黒いデメキンがだるそうにゆらめいていた…

「………」
「かわいいでしょう♪」

えーと…

            かわいい

            かわいそう