更衣室のロッカーは有料だった。

「はい、天君。ロッカー代」
「ううん、いらない」
首を横に振ってそう言う天君の手にコインを握らせる。
「ありがとう」
「だって僕が誘ったから」
さっきのバス代も僕が払った。

天君が喜ぶなら何でもしてあげたいけど、僕に出来る事ってあまり無いから
小銭くらい、いくらでも出したい気持ち。

僕は天君に会わせてゆっくり着替えをすませた。

「さ、行こうか」
「んー……」

水着になった天君は華奢な胴の前で腕を組み、なにやら考えこんでいる。

「天君?」
「ボク、目が悪いのね」
「目?」
「コンタクトなの」
「そうなんだ、知らなかった。視力悪いの?」
「すごく悪いの。学校のプールだったらよく知ってるし、みなちゃんやようこさんが
 手をつないでくれるからコンタクト外しても大丈夫なの」
「…手くらい僕がつないであげるよ」
「でも水遊びするくらいなら外さなくても大丈夫なの。学校でもよく付けて入るの」
「うーん…」
「夏木くん決めて?」

え?僕が決めていいの?ならば…


           外したら?

           付けてたほうがいい。