さっき、最初にプールに来た時に、勇士が立ち止まったあたりで僕は足を止めた。
更衣室入口。
かすかな気配。
僕は耳を澄ませた。
微かな笑い。くぐもった声。息遣い。
…はっきりとはわからないけれど、僕は自分の顔が赤らんで頬が熱くなるのを感じた。
息を止めてそっと更衣室を覗き込んだ。
「………」
椅子に座った人。その前に屈み込んだ人(たぶん副部長)
こっちに背を向けて立っている人の裸のお尻、2人のほうを見ながら動いてる手…
…これは、たぶん、つまり、あれだ。
「涼」
後から声をかけられて僕の体はビクッ!と震えた。
…なんだ、勇士か。
勇士はこわいような顔をして立っていた。
「かかわるとロクな事がねえぞ。こっち来な」
なのに優しい口調で僕にそう言う。
水から上がった直後の勇士の髪からは、ぽたぽた水が落ちていた。
僕なんか忘れて遊んでると思ったけど…。
すぐに水から上がって急いで来てくれたんだ。
「潮?夏木もいるのか?よかったら君達もこないか」
まるでお菓子が余ってるからおいでと誘うような調子で軽く、副部長が僕等を呼んだ。
僕は……
勇士に従ってその場を離れた。
副部長達に加わった。