バスに乗り、「遊園地前」駅で下車する。

えーと、プールにはどこから入るんだろう。

楽しそうな音楽が流れてくる遊園地の門を通りすぎて、
案内看板を見つけた僕は無事にプール専用門の前に来た。

「あの、これあげます」

丁度、券を買おうとしていたカップルがいたから
兄ちゃんに貰った2枚の券のうち1枚をあげた。

カップルは喜ぶよりもびっくりしていたけど、まあいいや。

僕はコスチュームを着たお姉さんに券を渡し、
見えないスタンプを手の甲に押してもらって中へ入った。

1人で着替えて1人でプールサイドを歩く。1人で楽しそうなプールを探して
1人で泳ぐ…。

はぁ…。何しても僕は1人ぼっちの可哀相な子なんだモードに入っちゃうな。

1人でも楽しく遊べるようにならなくっちゃ。
卒業して大人になったらもっと、もしかしたら、もう、洋兄ちゃんは遊んでくれないのだから…

僕はウォータースライダーへと向った。
だって滑り台は1人で滑るものだからね。

…だけどそれは間違いだった。
一瞬滑るためには20分並んでいなければならないのだ。
皆、家族や友達や恋人と喋って楽しそうなのに僕ときたら…。

退屈だし…。暑いし…。僕、何してるんだろ。

「さっきはありがとう」
「え?」
見ると折り返しの列の丁度横に、入口でチケットをあげたカップルがいた。
「お返しにこれあげる。ドリンクバーで使って」
「ありがとうございます」

僕はチケットの代わりにチケットを貰った。
お酒でもジュースでも好きな飲み物が一杯、無料で飲める券だ。

だけど、今貰っても困るなあ。僕、お兄さんみたいにウエストポーチしてないし
水着にポケットもないんだけど…

       並ぶのをやめて飲みに行く。

       並び続ける。