「……?」
「なんでもないよ沢村。泳ごう」
あんなに素敵なお母さんだったら似てるっていわれて嬉しいかもしれないけど…
やっぱり僕は黙ってる事にした。
僕はお母さんに似てるって言われたらイヤなんだもん!
別にキライじゃないけど、男の子は皆そんなもんでしょ。
「どこで泳ごうかー」
僕はプールを見渡した。
大きなウォータースライダー。波のプール。噴水プール。
プールサイドには椰子の木やいろんな植物と、空想の水動物のオブジェがある。
「…どこでも」
「じゃあ全部入ろうー」
僕達は片っ端からプールに入って周った。
沢村と遊ぶのは楽しかった。
沢村はいろんな事を知っている。
水が動く法則。日の光の屈折度。
植物の生態。架空の生物の物語。
僕は彼を褒めたが、
「本で読んだ知識は経験のうちに入らないから」
とだけ言った。
泳ぐのも楽しいけど、僕、沢村ともっと話したいな…
「どこか座るとこないかな?」
「…あの辺りにテーブルと椅子がある。そろそろ休憩しないか?
チケット代の代わりに、よければ、何か奢るが…」
「わーい。ありがとー♪」
「えっ、いいよ。自分で払うよ」