私達は再び、木々に挟まれた林の中の道を歩きだした。

細い小道を右へ左へと曲がりすすむ。

「…なんだか、戻ってないか?」
忍が空をみて呟く。

「ちがう み、ち 思うます」
銅は足元の黒い石を拾い上げた。

「思います、だろ?」
「思いま す?忍さ ま」
「よしよし、上手だぞ」

私は道の先を見た。奥へ行くにしたがい、
道に落ちた黒い石の量が増えている。

「確かに、これまでの道には無かったが…」

銅が手のひらでころころと弄んでいる石は
楕円で磨かれたような輝きをしている。

普通の森ではないのだから、石の一つや二つ、
気に病むのもおかしな話しだ。

何より
私は、待たされるのと、戻るのは好かぬ。

「歩くぞ、忍。銅」
「はいはい」
「はいは い」

…いらん事まで真似したな。

「可愛くない奴隷は捨てて帰るぞ」

そう言うと、意味もわからんくせに銅は泣き出した。

すぐ泣く奴はかわいらしいので許す事にする。
ついでに、主を睨む態度の悪い騎士も許す事にしよう。
私は良い王だ。




道の黒い石がだんだんと増える。

終いには真っ黒な道になった。
じゃりじゃりと石を踏む脚は疲労で重い。

どれくらい歩いただろうか…
この道には先が見えない。

雲行きも怪しくなり、季節外れにも豪雨を呼びそうな重く黒い雲が空を被っている。
吹く風も身を切るように冷たい。
雪がないのが不思議なほどだ。

異常な寒さが体力を奪う。
忍は俯いて黙々と、ただひたすら脚を前へと動かしている。
銅はといえば泣きながら、どうにかついてきている。

私は歩きを止めた。

この道は異常だ。
いつまでも同じ木々が、いつまでも右に曲がる道成りが続いている。
呪術か…?

…おのれ、私を謀るとは。



私はこの道の呪縛から逃れる為に……


呪文を唱えた     剣を掲げた    忍になんとかしろと言った