「どうぞ…」
「お邪魔しまーす」

部屋は洋兄ちゃんと同じ間取りなのに全然雰囲気が違った。
統一された家具に、壁にもかっこいいパネルが貼ってあったりして、洗練されている。
「お金持ちなんですねえ」
「はは、だったらもっといいマンションに住んでいるよ」
「お金ないんですか?」
「無いわけではないが、ここは駅や図書館なんかに近くて便利なのでね。どうぞ、座ったら」
「あっ、はい…」
しまった。僕、バカみたいな事ばっかり言ってる…

アイスを舐めていると、男の人は氷を入れたグラスを2つ持ってきて
さっきコンビニで買ってきた小さいペットボトルのお茶を両方に分けて注いだ。

「困ったな…」
「ごめんなさい、もう失礼な事言いません…」
「ん?いや、ウチにはテレビもないし、君が時間をつぶせるような物がなくて」
「ええっ!!テレビがないんですか?だったら毎日何してるの!?」
「そんなに驚く事だろうか…。毎日、ねえ。仕事をしている、かな」
「かわいそう…」
「はは…」

でも僕はおもしろそうな物を見つけてしまった。

「あ、あれカメラですよね」
「そうだよ」
プロの人が使うようなゴツくて重そうなカメラ。あんなの持ってるって事は趣味もあるんじゃないか。
「好きなんですか?カメラ」
「仕事でね。一応プロなんだ」
「すごいなーっ。風景とか撮るんですか?」
「私は低俗趣味でね。人を取るのが好きなんだ」
優しそうな瞳がすこし輝いた。低俗なんて自分では言ってるけど、
好きな事に自信をもって、それを仕事にできるってかっこいいなあと僕は思った。

「どうしたの?急に黙って…」
黙ってたし、じっと見てたらそう言われてしまった。
ええっと…

           かっこいいなあと思って

           僕も撮って欲しいなあと思って

           なんでもないです。